淡白なロリータ先輩はぼくにだけ柔い

 なんとかおばさんの分まで夕食を食べ切った後、ぼくと灰崎先輩は帰り道にある二十四時間営業のスーパーで買い出しをした。おばさんの言づけ通り、明日土曜日の分の食材を買う。

 ただし、お昼ご飯は二人分だ。さっき、明日は朝から営業先へ行くと言っていたから、おばさんは多分帰ってこない。夜も帰宅が何時になるかわからないので、保存がきいて調理も簡単な冷凍の味付き魚を三人分カゴに入れる。

「ニレのおばさん、いつも忙しそう。予定もよくわかんないし」
「業界的にフットワークが命らしいんです。趣味と仕事がおんなじ人が多いから、平日も休日もない感じで。でも昔からこうなので、もう慣れました」

 買い物を終えた帰り道、ぼくは誇らしい気持ちで答えた。

 大通りから一本入った静かな住宅街に、灰崎先輩が持ってくれているスーパーの袋の音がカサカサと響く。

「……ニレ。ニレはさ、」
「? はい」

 ずいぶん高いところにある顔を見上げると、灰崎先輩は言葉を探すように黙り込んでしまった。ぼくは不思議に思って首を傾げつつ、ふいにスーパーで買ったある物のことを思い出して、「あっ」と小さく叫んでしまう。

「そうだ先輩。アイスもらってもいいですか。食べながら帰りたくて買ったので」

 ぼくの頭に浮かんでいたのは、先ほど買ったばかりの氷アイスだった。今日はけっこう気温が高くて、つい食べたくなって買ってしまったのだ。

 立ち止まった先輩が中を見やすいように袋の口を広げてくれたので、ぼくはそれを覗き込んで、中から目的のアイスを取り出した。包装を開けてひと口齧り、口の中に広がった爽やかなソーダ味に頰が緩んで、つい先輩に向けてアイスを持った手を差し出してしまう。

「先輩も食べますか? おいしいですよ」
「じゃあひと口だけ、もらおうかな」

 先輩はぼくの手首ごとアイスを掴み、マスクを外して身を屈めてきた。サラサラの銀髪と麗しい顔が間近に迫ってようやく、ぼくは自分が、けっこう大胆なことをしてしまったことに気づく。

 やばい。食べかけなんて、先輩嫌だったかな……?

 気まずさと緊張でドキドキするぼくの手から、先輩は何食わぬ顔でアイスを一欠片さらっていく。「ありがと」とこちらに向けられた穏やかな視線に、ぼくは無性に嬉しくなる。

「……先輩ってどうして、学校ではいつもマスクなんですか?」

 今ならいけるかもって、なぜかそう思って、ぼくはつい聞いてしまった。

 だけどぼくの問いかけを聞いた瞬間、先輩の顔がピキリと固まった。

「あ……っ、その。ちょっと気になっただけなので」

 先輩の眉間に寄ったシワを見て、ぼくはすぐに、やっぱり聞かなければよかったと後悔する。

 急いで謝らないと。

 そう思って、慌てて息を吸い込む。だけど道の先から「なぎさくん?」と呼ばれて、ぼくは思わずそちらを振り返った。