先輩に連れられるがまま電車を乗り継いで、道を歩いて。
最終的にぼくたちがたどり着いたのは、街中にある小さな遊園地だった。
先輩は電車の中で、なにも言わずに二人分のオンラインチケットを買っていたみたいだ。入口に着くなり、係りの人に「二人分」と伝えてスマートフォンを機械にかざし、あっという間に入園手続きを済ませてしまう。
「わ……、すごい人ですね」
一瞬、突然連れてこられた衝撃も忘れて、ぼくは呆然とつぶやいてしまう。それくらいに、小さな遊園地は人であふれていた。高校生や大学生っぽい集団も多いけど、やっぱりメインは小さな子どもがいる家族連れだ。
視界のあちこちで、子どもたちは思い思いに笑ったり泣いたりしている。それを見守る大人たちの表情も、笑っていたり怒っていたりと色々だ。
でもぼくの目には、その誰もがとても幸せそうに見えた――過ごしやすい秋晴れの午後の日差しに照らされて、目に映る景色ぜんぶがキラキラ、キラキラ輝いている。
「懐かしい」よりも「うらやましい」と思ってしまう自分に気づいて、胸がきゅっと締めつけられる。
そんなぼくの隣にそっと並んだ灰崎先輩が、「昔、」と静かに口を開いた。
「本当にずっと昔、母さんと一回だけ来たことがあるんだ。すごく、すごく楽しくて、大好きで……だけどずっと、一人で出歩けるようになってからも、来れなかった。皆が笑っている場所にいると、俺だけひとり、苦しくなるから」
先輩はそう言いながら、自分の心臓のあたりの布地をきゅっと掴んだ。
その仕草だけで、「同じだったんだ」ってぼくは気づく。きっと灰崎先輩も、ぼくが感じた寂しさと同じ寂しさを感じながら生きてきたんだ。
「でも今日は、ニレがいるから」
ぽつりとつぶやいた後、先輩は少し身を屈めて、ぼくの手を柔らかく握ってきた――不自然な角度で逸らされた顔に、灰色の横髪から覗く真っ赤な耳。おずおずとドキドキが混ざった、少し湿った長い指先。
先輩の手に込められた力は、さっき無理矢理改札まで引っ張られた時よりもずっと弱い。
だけどぼくは、その手を振りほどかなかった。だってすごく、すごく嬉しかったから。
最終的にぼくたちがたどり着いたのは、街中にある小さな遊園地だった。
先輩は電車の中で、なにも言わずに二人分のオンラインチケットを買っていたみたいだ。入口に着くなり、係りの人に「二人分」と伝えてスマートフォンを機械にかざし、あっという間に入園手続きを済ませてしまう。
「わ……、すごい人ですね」
一瞬、突然連れてこられた衝撃も忘れて、ぼくは呆然とつぶやいてしまう。それくらいに、小さな遊園地は人であふれていた。高校生や大学生っぽい集団も多いけど、やっぱりメインは小さな子どもがいる家族連れだ。
視界のあちこちで、子どもたちは思い思いに笑ったり泣いたりしている。それを見守る大人たちの表情も、笑っていたり怒っていたりと色々だ。
でもぼくの目には、その誰もがとても幸せそうに見えた――過ごしやすい秋晴れの午後の日差しに照らされて、目に映る景色ぜんぶがキラキラ、キラキラ輝いている。
「懐かしい」よりも「うらやましい」と思ってしまう自分に気づいて、胸がきゅっと締めつけられる。
そんなぼくの隣にそっと並んだ灰崎先輩が、「昔、」と静かに口を開いた。
「本当にずっと昔、母さんと一回だけ来たことがあるんだ。すごく、すごく楽しくて、大好きで……だけどずっと、一人で出歩けるようになってからも、来れなかった。皆が笑っている場所にいると、俺だけひとり、苦しくなるから」
先輩はそう言いながら、自分の心臓のあたりの布地をきゅっと掴んだ。
その仕草だけで、「同じだったんだ」ってぼくは気づく。きっと灰崎先輩も、ぼくが感じた寂しさと同じ寂しさを感じながら生きてきたんだ。
「でも今日は、ニレがいるから」
ぽつりとつぶやいた後、先輩は少し身を屈めて、ぼくの手を柔らかく握ってきた――不自然な角度で逸らされた顔に、灰色の横髪から覗く真っ赤な耳。おずおずとドキドキが混ざった、少し湿った長い指先。
先輩の手に込められた力は、さっき無理矢理改札まで引っ張られた時よりもずっと弱い。
だけどぼくは、その手を振りほどかなかった。だってすごく、すごく嬉しかったから。


