淡白なロリータ先輩はぼくにだけ柔い

 その日の夕食は、ぼくと先輩とおばさんの三人で焼肉だった。もうもう煙が立ち込める店内で、ジュウジュウ肉の焼ける音が響いている。

「なぎさ、それっぽっちしか食べないの? ほらカルビ。あとハラミも! 御仁くんも遠慮しないで。お母さんにちゃんとお金もらってるんだから」

 おばさんはニコニコ笑いながら、ぼくと先輩の取り皿に焼けた肉をどんどん持っていく。カルビ、ハラミ、タン、ロース、ホルモン、豚、鳥、軟骨、牛レバー……。

「おばさん、ぼくも先輩もそんなに食べれないって」
「なーによう、育ち盛りでしょ。私より全然食べてないじゃない」
「おばさんが食べすぎなんだよ……」

 お肉はおいしいけど、何事にも限度ってものがある。ぼくの隣で黙々と肉を食す灰崎先輩だって、まるで修行僧みたいな無表情だ。

「先輩、無理しなくていいですからね。ほんと」
「うん……」

 朦朧と応えた先輩は、それでも肉を食べる手を止めない。ぼくはファミリーレストランでおばさんが残していったメニューを食べた時のことを思い出した。

 付け合わせのポテトまで、先輩はしっかりと食べていた。自分に割り当てられた食事を残すっていう発想は多分、先輩には初めからないんだろうな。