淡白なロリータ先輩はぼくにだけ柔い

 先輩はその後すぐに撮影に戻って、中断していた分の時間が気にならなくなるほどスムーズにカットをこなしていった。

 先輩がポーズをとって微笑むだけで、身につけた服やアクセサリーが元の何百倍も輝いて見えた。もちろん以前からそうだったけど、今日の先輩は今までで一番すごい。清々しいというか、吹っ切れてるというか。

「御仁くん、あんなキラキラしてたっけ?」

 事務所での仕事を終えて顔を出したおばさんが、スタジオ入口で足を止めて思わずそうつぶやいてしまうくらい、先輩は変わった。

 その事実がぼくは、自分のことみたいに嬉しくて。

「次のカタログ、今からすっごく楽しみですね」

 スタジオからの帰り道、ぼくは先輩の顔を見上げて、ついニコニコと頬を緩めてしまう。おばさんは撮影データのチェックでまだスタジオに残っているから、少し蒸し暑い曇天の下、ぼくと先輩は二人きりで歩いている。

「そうかな」
「そうですよ! だって、すごくよかったですもん。前からステキだけど、今まで以上にキラキラでした。メイクルームではあんなに不安そうだったのに」
「それは……ニレのお陰」
「え?」
「ニレが俺のこと、『魔法使い』って言ってくれたから。本当におとぎ話の魔法使いになったつもりでカメラの前に立ったら、いつもよりももっと息がしやすかった。俺がロリータで魔法を使うなら、ニレは言葉の魔法使いだ」

 嬉しそうに、眩しそうに笑いかけられて、ぼくの顔は一気に熱くなった。そんな目で見つめられて、そんな風に言ってもらえるなんて、妄想の中ですら考えたことがなかったから。

「それならその……よかった、です」

 自然と顔が熱くなってしまって、ぼくはドギマギとうつむいた。嬉しさと喜びで胸がいっぱいで、何事もなかったかのように振る舞うなんて、到底無理な話だった。