淡白なロリータ先輩はぼくにだけ柔い

 そんなやり取りがあってから、ぼくはますます灰崎先輩のことが好きになった。綺麗で可愛いだけじゃなくて、優しくて頼りにもなるなんて。ズルいくらいにステキすぎて、憧れと恋心は募るばかり。

 先輩が気遣ってくれたことが、ぼくは本当に嬉しかった。だから今後、もし先輩が困るようなことがあったら、ぼくが一番に助けてあげるんだって心に決めて――そして。

 それを実行する機会は、ぼくが思っていたよりもずいぶんと早く、唐突に訪れた。

「なぎさ、いつものスタジオに御仁くんの水筒届けてくれない?」

 おばさんからそんな風に声をかけられたのは、その次の週の日曜日、午前十時頃だった。

「今日秋物のカタログ撮影なのよ。私も後から行くんだけど、その前に事務所でどうしても確認しなきゃいけない資料があって。それと御仁くん、今朝ちょっと様子おかしかったのよね」

 え? とぼくが問い返すと、おばさんは玄関で靴を履きながらこちらを振り向いた。

「今回からメイン担当のカメラマンさんが変わるんだけど。その話したらなんか……若干目が泳いでたっていうか。相変わらず淡々としてるから気のせいかなって思ったけど、いつもは絶対に忘れない水筒置いていっちゃうし」

 様子見がてら、お願い!

 ぱちんっ、と手をあわせて、おばさんは家を出ていった。

 残されたぼくは、ポカンと口を開けてその場に立ち尽くした。だけどそのうち、じわじわと言われた意味を理解して、「それって一大事じゃん!」って気づいた。

 先輩、慣れてない人無理って言ってたのに!

 忘れ物までするなんて、絶対動揺してるよね……?

 ダイニングの机に視線を移すと、確かにステンレス製の水筒が置きっぱなしになっている。

 慌ててそれを引っ掴んだぼくは、最低限の身支度だけ整えて家を飛び出した。