淡白なロリータ先輩はぼくにだけ柔い

「じゃあニレ、おやすみ」

 そう言って先輩が部屋の電気を消したのは、夜の九時だった。

 おばさんは職場の人と食事をしていて、まだ帰ってこない。真っ暗で静かになった部屋の中、ぼくは自分のベッドに、先輩は隅に敷いた布団にそれぞれもぐり込んでいる。

 ぼくたちは寝るのが早い。ぼくには元々、早起きして小説を書く習慣があったし、灰崎先輩も美容のために早寝早起きを心掛けているようだった。だったら同じ時間に寝て、同じ時間に早起きして活動した方がいい、という話に自然となって。早く起きた分の時間で、ぼくは今まで通り小説を、受験生の灰崎先輩は受験勉強をしている。

 先輩、卒業しちゃうのか……。

 まだ一年近く先の事なのに、ふと想像して寂しくなった。

 なんでぼく、先輩と同じ歳じゃないんだろう。せめて一歳差とかだったら、もう少し長く一緒に高校生活を送れたのに。

 そんなことをつい考えてしまうけど、本当だったら、ずっと憧れていたモデルさんと同じ学校に通えているなんて、それだけでめちゃくちゃすごいことだ。それが急に、同居するって話になって、「喋るのは、ニレといる時だけ」なんて言ってもらえるまでになって。

 自分はすごく、すごく贅沢な人間だなって自分で思う。だけど今がすごく楽しいから、どうしても、もっとずっと、こんな日々が続けばいいなあなんて考えてしまう。

 人間って幸せすぎたり楽しすぎたりすると、ちょっと寂しくもなるんだ。

 ぼくはそんなこと、先輩を好きになるまで全く知らなかった。