……ジェイドさんは、私のややウケ狙いな発言にも、肯定して穏やかに微笑むのみ。

 別にここで『いやいや、それは難しくない?』と、正直に言ってくれても、『もーっ、ひどいですよー!』なんて言って、笑い飛ばすのに。

 そういう流れだって、計算済みで言ったのに。

 ……なんなの。不意打ち。

 この人は女の子が嫌がること、絶対しないんだよなぁ……これまでずっとそうだった。

 ついうっかり、何かの拍子で好きになっちゃうよ。こんなの。危ない危ない。

 これ以上は近付いては駄目な、危険人物。


◇◆◇


 数日間にも及ぶユンカナン王国へ向かう旅路だったけれど、疲労しているはずのジェイドさんは常に変わらずに、私へと紳士な対応だった。

 野営時には深夜にも焚き火を絶やすわけにもいかなかったから、私が眠っている時には彼が起きていてくれた。

 けれど、いつ眠っているのだろうと心配になってしまうほど、あまり眠れていない様子だ。