「それで、こんなにも俺の竜を喚び出すことに、必死になっているのか……そうか。元はと言えば、君の家族のためだったんだな」

 ジェイドさんは私のこれまでの経緯を聞いて、色々と納得したかのように頷いた。

「そうですね。はい。きっと……自分のためだけでは、ここまで頑張れませんから」

「それにしても、手段は選ばずで、俺は驚いたが」

 ゆらゆらと揺れる炎に照らされたジェイドさんの顔は、苦笑いしていた。

 ……あれはもう終わってしまったことだけれど、彼の肌に触れた熱さを覚えていると言えばそうだった……いえいえ。

 それは、仕事仕事のための仕事で仕事仕事、なんだけどね! 今は二人きりで夜ですけれど、何も起こらないからね……!

「教皇には『どうせお前では出来ないだろう』って思われたんだと思うんですけど、竜騎士との接触面を増やせば出来ることが多いというのは、確かなことなので、私が身体を張れば出来るだろうと思いました。ここに来る前に、完全に覚悟を決めて来たので……ええ。初対面では、大変失礼をしてしまい」

 私は今更ながらに、ジェイドさんの初対面を思い出し、とても恥ずかしくなった。

 あの時は迷いに迷った挙げ句に『聖女を辞めるためには、これをやるしかない。もう決めた。あとあのクソ陰険教皇の思い通りには、絶対にならない。絶対に』と言わんばかりの思い詰めた勢いだったし、目も据わっていただろうし、もしかしたら瞳孔だって開いていたかもしれない。興奮し過ぎて。

 そんな私の提案を聞いた、何も知らないジェイドさんの驚きたるや……良く、数日で自分なりの妥協案を出し受けてくれる気になったものだと思う。

 ううん……彼がそれだけ、自分の竜に会いたかったということだろう。