あんの嘘ばかりのインチキ教皇……絶対に聖女を辞めたい普通の貴族令嬢に戻りたいと言い張る私に対し、名のある竜喚び聖女たちが何度挑戦しても無理だった引き合いに出して、辞めたいならこれをこなすしかない状況にしてしまうという手腕はおみそれするわ。

 一応、希望は聞いたよ。ふはは。お前には、どうせ無理だろう。そんな馬鹿にするような言葉が、空のどこかから聞こえて来るようよ。

 あっの、陰険タヌキ親父、絶対に後悔させてやる……残念でした! そっちが吹っ掛けた無理難題を、こっちは華麗にこなしてみせるわ!

「……私にはジェイドさんの竜が現在どういう状態なのかわからないので、とりあえずいつもの竜喚びをしてみましょう」

 私は手のひらをジェイドさんに向けて、右手を挙げた。

 竜喚び時、聖女と竜騎士は手のひらを重ね合う。彼は無言のままで私の手に触れ、竜騎士として鍛えられた証拠である固い手のひらを感じた。

 ……その瞬間、私たちの重なり合った手の隙間から白い光が漏れる。

 私はジェイドさんの体内にある竜との契約を探し、竜喚びの能力で、それを共鳴させた。