「私を産んで……母が亡くなって、今邸に父が一人なんです。だから、家に戻りたくて」

 私を産んだ直後、産後の肥立ちが悪くて母は亡くなってしまったらしい。私に『天啓』があることを、母は喜んでいたというのは、父から聞いた話だ。

 それが、どこまで本当なのか、わからない。私が自分に与えられた天啓を呪わないように、両親のどちらかが嘘をついているかもしれないとは……思ってはいた。

 だって、『天啓』持ちは、幼い頃から両親から引き離されてしまう。

 父を一人遺していってしまった母は、それを……彼から子が引き離されることを、喜んだだろうか。

「そうか」

 ジェイドさんは相づちだけ打って、黙ってしまった。

 ここまでで、何も言えないよね……私も、あまり人には言わない。けれど、聞いたのは彼なので、私は色々と言い切ってしまおうと思った。

 こんなこと……話す機会も、もうないかもしれないから。

「ジェイドさんほどではないですけど、美男子なんですよ。うちの父。けれど、ずーっと再婚断っているんです。子どもは、私一人は居るから充分だろうって」

「貴族の血を繋ぐという意味では、そうだとは思うが」