私たちは聖女教育を受ける時に、それを口酸っぱくして教えられるのだ。その目で見える現実以外を、あまり、長い間見てはいけないと。

 ああ……美しい赤い瞳が、私を見た。そう思った。


ーーーー意識が戻る瞬間は、突然だった。


「二ア……ラヴィ二ア? 大丈夫か?」

 彼の背中にぴったりとくっつき、両手で抱きしめていた私が何も言わないままだったので、心配したジェイドさんが、ずっと呼びかけてくれていたようだ。

「あ……はい。はい。大丈夫です」

 自分で想定していたよりも、深く潜り長くすぎたのかもしれない。立ち上がろうとしてよろけて、彼の肩に手をついてしまった。

「ラヴィ二ア?」

「ごめんなさい。本当に……もう、大丈夫です」

 さっき見えた、あの国旗。あれは、確か……。

 先ほど見えた図案を忘れたくない。私は手早く服を着て、下着姿のジェイドさんから目隠しを取り払い、手を縛っていた縄を切った。

「……背中と背中なのかと……」

 立ち上がり顔が赤くなっているジェイドさんの呟きを聞いて、私は一瞬、彼がここで何を言っているのかわからなかった。