おそるおそる、すぐ傍にあるジェイドさんの広い背中へと近付いた。

 とても綺麗な背中だ。なんていう名前の筋肉かわからないけれど綺麗に盛り上がり、全体的には逆三角形の形をしている。

 こんなことを言ってしまうとなんだけれど、今ここで私が彼を殺そうと思えば、簡単に出来てしまうという状況にあるし、それだけ信用されているのであれば……必ず期待に応えたい。

「しっ……失礼します」

 緊張し過ぎて声が裏返った私に、ジェイドさんは思わず小さく吹き出したようだった。

 けど、何も言わなかった。

 ええ。短い付き合いですが、ジェイドさんの人となりは承知しております。貴方は貴族出身だからというわけでもなく、性格が完全に紳士ですものね。

 ジェイドさんにちゃんと会うまでは、職務上でそういうことが出来るなら幸運くらいに思って貰えて、お互い半裸になって私を背中から抱きしめてもらうくらい、簡単に済むだろうと思って居た。

 けれど、ジェイドさんは驚いてしまうほどの潔癖さを見せたし、私には万が一の危険や不利益を与えないようにしてくれて非常に誠実だった。

 そっと背中に触れると、熱い。体温の違いだろうか。鍛え上げられた筋肉のせいかもしれない。

「ラヴィ二ア。ごめん。抵抗があるのは、わかるけど……その」

 私が彼の背中を触っていたら、ジェイドさんが身じろぎをしていた。時間が掛かっているので、どうしたのかと不安になってしまったのかもしれない。

「あ! ごめんなさい……!」

 慌てた私は色気も何もなく、勢い良く彼の背中に抱きついた。二人の肌が触れた。

 ……熱い。