声を震わせる美女。彼女もジェイドさんと同じように、驚きを隠せずに目を見開いていた。

 ジェイドさんが驚いている理由、ナタリアさんが驚いている理由。言葉もなくここで見つめ合う理由。それは、婚約解消したはずの二人が、ここで再会したからなのね。

 ……この女性が、ジェイドさんを捨てたという、その人なんだ。

「ナタリア。俺は竜騎士を辞めていない。これは、職務上の理由で同僚と夜会に来ている」

 ええ……その通りなのですけれどね。

 なんだか、浮気のような現場を見られてしまったけれど『仕事上の相手なんだ』という言いわけを聞いているようで、私は面白くないですね。

 それは、事実そのままで、その通りなんですけれども。

「そう。そうよね。貴方は、一度決めたことは、曲げない人だもの……」

「ナタリア……」

「もう謝らないでちょうだい。ジェイド。私……もうすぐ、他の人と婚約するの。貴方とのことは、もうはっきりと振り切ったの」

 毅然としてそう言い放ったナタリアさんは、美しいカーテシ-を披露して私たちの元から去って行った。