「ジェイドさんって、ダンスお上手ですね」

 私は素直に、そう思った。

 ジェイドさんの場合、身のこなしも気品があり優雅で運動神経が良いこともあるけれど、相手側、つまり私に負担を掛けないように踊ってくれる。

 自分ではなく女性側主導で動きやすく、それで居て、正確な|足取り(ステップ)を踏むのだ。

 持って生まれた運動能力やリズム感などもあると思うけれど、相手側を気遣う彼の気持ちも、そこには多大に貢献している。

「……俺は貴族出身だから。次男だし伯爵となる兄の予備(スペア)として育てられた。家督を継ぐわけでもなく騎士として身を立てていくことは仕方なかったんだが、跡継ぎの兄の予備である以上は、俺は同じように育てられたから」