「どうして、敢えて下品な発言を選んで口にする? ……君は聖女だとしても、アスティ公爵令嬢だろう? 先ほどの夜会の場でも、その場に応じて君は対応していた。それが、わからないはずはない」

 あらあら……ジェイドさんたら。見たままをそのままで判断しないのも、良い男の条件ですよね。

 私たち二人が決して結ばれない運命であるのは、なんだか残念。

「……男性に、必要以上に好かれないためです。私はもうすぐ出会う予定の、王子様と結婚するので! ジェイドさんも、好きにならないでくださいね?」

 私は左右のひとさし指で×を作り、おどけてそう言った。

 アスティ公爵令嬢の私がお上品な発言をするならば、それなりに男性が寄って来る。

 高い身分に珍しい天啓を持ち、美しいと評判だったお母さま似の外見……それは、どうしようもなく仕方ないことだと思うの。

 けれど、結ばれたい好きな男性以外に好かれても、それは必要のない無駄モテであると私は思う。

「ああ……努力はする」

 ……私がもし王位を受け継ぐ王子様と結婚したら、国王令で美男子の皆さんの思わせぶりな言葉を禁止させていただいてもよろしいですかー?!