「そうしてください。顔の良い男性は、本当に気を付けるべきだと思うんですよね……!」

 女の子の心を何の気なしに盗むなんて、とんでもない悪行ですよ。出来れば、そちらの気のある女性の前でしていただけます?

「そ……そうか。そんなことを、これまで考えたこともなかったな……」

 外見が良いのに女遊びなんて興味なさそうなジェイドさんは、とても素敵な方です。それは、私だって認めます。

 ですが、職業竜騎士なので私は恋に落ちるわけにはいかないのです。そちらについては、やむにやまれぬ事情がありまして、どうかご了承ください。

「どうして、聖女を辞めたいんだ? 一生安泰と言えば、そうではないのか」

 ジェイドさんは、ふと思いついたように私に聞いた。

 『普通の貴族令嬢に戻りたい』という私の主張は、あまり受け入れられるものではないのかもしれない。

「それは、確かにそうです。教会から派遣されて竜騎士団に居れば、竜喚びの天啓を持って生まれた私は一生大事にされて、守られます。けれど、それではあまりにも面白くないんです! 私は色んな人と出会って、色んな事を経験したいです!」