「はい! 大丈夫です」

 私は名前を呼ぶ許可まで貰おうとする、ジェイドさんの真面目具合に微笑んだ。

 渡されていた書類によると、竜騎士ジェイドさんは私より二つ年上らしいので、そう呼んでもらうことが適当だと思う。

「ラヴィ二アはどうして、竜騎士が嫌なんだ……?」

 それはね。私が聖女なんてもうやりたくない、不良聖女だからだよー! なんて、ここでジェイドさんに言ったところで、話が長くなるだけだった。

「幼い頃から一緒に居過ぎて竜騎士の皆さんの筋肉ムキムキを、見飽きちゃったんです! 聖女を辞められたら、王子様と恋に落ちる予定です」

 嘘嘘。男性の鍛えられた筋肉は大好きなほうなんですけど、聖女を辞めるなら、職業竜騎士を恋愛対象から省くしかないんです!

「そ、そうか……確かに、全員が鍛えているからな……」

 人の言葉を疑うことなんて知らなそうなジェイドさんは、私の強い主張を聞き戸惑ったように頷いていた。