「あ……そういえば、ナタリアと久しぶりに話せたよ」

「え!?」

 その時、ナタリアさんの名前を聞いて、私の心がざわついてしまった。

 だって、元々婚約していた二人は色々と事情があって婚約解消の道を選ぶことになったけれど、嫌い合って別れたわけではないと……知っているから。

 前に進むためにジェイドさんのことが知りたいと、そう言っていたけれど、また素敵な元婚約者と話したら好きになってしまったとかは……ないよね?

「ナタリアはラヴィ二アが攫われてしまったと、すぐに知らせてくれたんだ。一旦、城へと帰った時には、自分の元婚約者なのだから、これ以上情けない姿を晒すなと、発破をかけられたよ。お互いに幸せになろうと……」

「ナタリアさん……」

 一瞬でもそんな彼女を疑ってしまった私が、なんだか恥ずかしくなってしまった。

 しかも、私たちが攫われたあの時、すぐにジェイドさんが追って来てくれていたのは、ナタリアさんが知らせてくれたおかげだった。

 ナタリアさんに比べて、人間出来てなさ過ぎて、恥ずかしい……つらい。

「帰ろう。なんだか、最近は色々ありすぎた……何日か休みたい」