けれど、空には障害物がなく、気流の乱れが影響のない上空まで抜けてしまえば、身体をぶつけて怪我をすることもない。

 だから、子竜から成竜へと姿を変えたゲイボルグには、ブリューナグから真上に抜けろという指示があったのだ。

「これは、ブリューナグの案だ。少し話す程度なら操作は可能だったんだが、ゲイボルグを成長させるために、あいつとラヴィ二アを繋げるために、俺はあの場所に行く必要があった」

「だから、ジェイドさんは危険を承知で崖を登って来たんですね」

「ああ」

 短い一言だったけれど、それがどれだけ困難なことだったか、私は知っている……もうー! 良い男なんだからー!!

 ジェイドさんってば、本当に最高の竜騎士だよ!

「ブリューナグとしては、あの男を直接操作したかったそうなのだが……何か強力な守護でも持っているのか、まったく出来なかったそうだ」

「あの人。謎が多かったですもんね……多分、あんな感じでも絶対、助かっていると思いますけど……」

 崖の上にある小屋が崩れて、今では生死不明な彼だけど、生きて居そうな気がする……殺しても死ななそうな、すっごく、しぶとそうな人だったし。