ジェイドさんは、何が起こったかわからずに混乱しているヨシュアさんを、話は済んだとばかりに、もう完全に無視することにしたようだ。

「すぐに行こう。ここは、寒いから」

「ゲイボルグ。一旦、元の姿に戻す。何も考えず、上を目指して飛べ」

 私の唇は意志に反して、勝手に動く。

 そして、ゲイボルグの身体はめきめきと音を鳴らして大きくなり、部屋を壊すまでになると、ジェイドさんは私を抱えて銀色の竜に飛び乗った。

「は? なんだ……これ……!」

 呆然としたヨシュアさんの足場は崩れ落ち、咄嗟に引っかかりを掴んだ彼は信じられないといわんばかりの声をあげた。

 そんな彼を置き去りにして、私たちは大きな翼の力で空へと舞い上がった。ゲイボルグはブリューナグの指示通りに、上へ上へと青い空を目指して飛ぶ。

 一瞬だけ見えたけれど、ヨシュアさんの隠れ家はバラバラと壊れ始めていた。

 抜け目のなさそうなあの人だったら逃げられそうだけど、これまでに獲得した物も、色々とため込んでいただろうに……いえ。同情なんて要らなかったわ。

 あんな人……全然、可哀想でもなんでないわ!