「崖の上にある小屋だろ?」

「いやいやいや、俺は竜騎士さんがそのお姉さんと子竜連れて、どうやって逃げるか想像もつかないわ」

「お前には無関係なので、知る必要はないだろう」

「まあねえ。それはそうだよ? けど、気流は乱れて竜も思うように飛べない。無理に飛行すれば、崖に体当たりすることになる。俺は無理だと思うよ。あの崖をお姉さんとその子竜を連れて降りることは、不可能だね。絶対無理だ」

 ジェイドさんはちゃんとそこを理解しているのかといわんばかりのヨシュアさんは、呆れたように肩を竦めた。

 ……私は助けに来てくれたジェイドさんを、信じたいと思う。けれど、この状況は確かにヨシュアさんの言った通りだった。

 私たちのように自力で崖を上がれない者を連れて、ジェイドさんはどうやって逃げるつもりなのかと。

「……なあ。賭けをしないか。この絶望的な状況を俺がどうにか出来たら、ゲイボルグのことを諦めると」

 ジェイドさんの言葉は、揺るぎない自信に満ちていた。

 私は彼の腕をぎゅっと抱きしめた。一瞬でも心配してしまった自分を恥じた。