私はキッパリと言い切った。こんな自分勝手な誘拐犯に媚びなんて、売るわけがない。

「……あれ。良いの~? そんな事言って。ここに居るなら、話し相手は俺だけだよ。食事を用意するのも世話するのも俺。逆らわない方が良いと思うよ……そういう元気な子を、俺好みに調教するのも楽しそうだ」

 にこにこと明るく微笑むヨシュアさん。そんな彼の爽やかな笑顔に、私はゾッとしたものを感じた。

 単純な脅しなんかではない。そこにあるのは、無邪気な興味。

 罪悪感なんてなくて……ただの、壊れても大丈夫な玩具のように、思われているような……そんな底知れぬ闇を覗き込んだ怖さ。

「さあ、いこいこ。部屋を用意したからさ……大丈夫。俺はお姉さん可愛いと思って居るし」

 もー……ジェイドさん。早めに助けに来てー!

 半泣きになりながら、私はゲイボルグを抱きかかえて、歩く彼の後に着いて行った。

「その竜から鱗貰ったら、竜は帰すからさ~」

「え? ……竜はって……」

 待って。さっき言っていたことと、内容が違ってない?

 スタスタと迷いなく歩くヨシュアさんに、私は小走りになって付いて行くしかない。