「まあ……どうやっても逃亡は無理だから、大丈夫だと思うけど、逃げないでね。少し待っててくれる? まさか、こんな事になっているなんて思わないからさー……部屋も何も用意出来てないんだよね」

 私と子竜姿のゲイボルグは、どこか山の中にある石造り建物の中へと飛行しながら舞い降りて、網の中に入れられているままだ。

 かなりの高所に居るようで、酸素が薄い気がする。

 ヨシュアさんはそこからさっさと移動して、私たちは取り残された。

「キュウ」

 ゲイボルグが私を見上げて前足を当てて、何か言いたがっているようだ。網の縄を切ろうとして頑張ってくれていたけれど、あと二本切れていれば……というところで、移動速度があんなに速くなるなんて思いもしなかった。

「自分のせいって、気にしているの? 大丈夫よ。すぐにジェイドさんが助けに来てくれるから」

 私は小さな身体の背中を、ポンポンと叩いた。

 昨夜、ジェイドさんがゲイボルグは私と居れば良いのではないかと提案してくれなければ、この子は一匹でヨシュアさんに攫われることになったかもしれない。

 そう思うと、ゾッとした。

 ヨシュアさんは賞金稼ぎをしていて、仕事で魔物を倒したり悪人を捕らえたりと報酬を得ているはずだ。