両手で白い凧にぶら下がるヨシュアさんは、雄々しい竜にすぐ後ろを付けられて追い掛けられているというのに、全く動じずに余裕の表情だった。

「逃げられないが、どうする? 城への不法侵入と、誘拐の現行犯だ。竜騎士団だって、俺たちを追ってくる」

 それほど高度は高くないので、ジェイドさんの声が良く通って聞こえた。

 距離が少々離れたとしても、ここにブリューナグが居れば、竜たちはすぐに追ってくれるはずだ。それほどまでに、黒竜の存在は圧倒的過ぎる。

「……ふーん。竜騎士か。竜が居なければ、何も出来ない男が。俺に偉そうに言うな」

「女性と子竜を攫って逃げるような奴に、偉そうも何もないだろう。幼稚な言いわけを聞いてやるから、さっさと地面に降りろよ」

 睨み合った二人は決して引かぬよいう態度だし、私はそんな中で息を殺していた。

「ははは。竜騎士と竜なしで直接やり合うのか。やっても良いねえ。俺は別にそれでも、構わないんだが」

「それでは、地面に降りろ。望み通りに、その余裕ぶった顔を地面に付けてやるよ」