「そう……そうなのね。無事で、良かったわ。あの人は銀竜が来なくなって本当に、落ち込んでいたから……こうして、無事に帰って来て、私も嬉しいわ。貴女も……大変だったわね」

「……はい。ありがとうございます」

 ナタリアさんはどこか吹っ切れた様子で、明るい笑顔を見せた。

「これで、私も心置きなく、次の人と婚約して良い関係になれるわ。やはり、婚約する前に、心残りは残したくなかったの。あまりにもジェイドの状況が……可哀想に見えていたのは、確かだから」

「それは、確かにそうです! すっごく不憫で可哀想でしたよね。今はもう元気で……まったく、そんな様子は見られないですよ」

 私はうんうんと大きく頷いたので、ナタリアさんは明るく笑った。

「そうなの……別れた男が可哀想だと、やっぱりどんな様子なのか気になってしまうものよ。だから、もうこれでジェイドのことを吹っ切れるわ。色々教えてくれて、ありがとう」

「いえいえ……お幸せに。ナタリアさん」

「貴女もね」

 ナタリアさんはにっこり明るく微笑んで、カーテシ-をすると去って行った。

 彼女は……まだ、ジェイドさんが好きというわけでもなさそう。

 別れた男が可哀想なままだと、ずっと気になってしまうって……私もそうなってしまうかもしれないと、なんだか思ってしまった。