どうしても気になってしまった私が直球で聞くと、彼女はなんとも言えない表情で首を横に振った。

「……いいえ。私はもう、ジェイドのことを、好きではないわ。そんな綺麗な気持ちを、彼に持っていないわね。ただ、気になったのよ。私に別れを告げた後の、元婚約者の動向をね。詳しいことは貴女に聞けば一番早いと思ったの。そう……やっぱり、そうだったのね」

「ナタリアさん……」

 感情を見せぬままで言い切った彼女は、私の肩に乗ったゲイボルグへと目を留めた。

「あら。可愛らしい子竜ね。もしかして……その子」

 彼女もジェイドさんにまつわる噂話は、既に聞いているだろう。ここ数日間、ノルドリア王国で国民たちが最も熱く語り合った話だからだ。

 ゲイボルグが子竜の姿になったことは、安全を考えて秘されているらしいけれど、勘の良い彼女にはそれがわかったのかもしれない。

「はい。これが、捕らえられていたジェイドさんの竜ゲイボルグです。こうして、無事に帰って来ることが出来ました」

 私はゲイボルグが乗った肩を向けると、ナタリアさんは興味深そうに見入った。