あまりにも普通の女の子に戻りた過ぎて、彼の気持ちを考えられていなかったわ。聖女失格よ。仕事を持つ成人失格。反省するしかない。

 私たちは向かい合って小さな机を挟んで座り、しばし、無言のままで時を過ごした。

 ジェイドさんは突然初対面の女とよくわからないことをしなければいけないことについて、色々と考えているのか、頬杖をついて明後日の方向を見つめていた。

 ……無理もないわ。

 だって、初対面の女に素肌を合わせましょうと提案されるのよ。しかも、職場で。信じられないわよね。この私が提案したんだけど。

 けれど、竜喚びの能力を高めるには、そうするしかない。

 私以外の聖女がこれを言い出さなかったのは『どうしても彼の竜を喚び出さねばいけない理由』がなかった。私にはある。それに、尽きてしまうだろう。

 ジェイドさんの心の準備とやらを待つために、私も長方形の窓をぼんやりと見て、飛行する鳥の数を数えていた。

 百羽に差し掛かろうとしていたその時、ジェイドさんはぽつりと呟いた。

「……申しわけないのだが、その方法しかないのか?」