組織では、上の人には逆らえないものだ……私も竜喚び聖女として、組織の中のひとつの歯車として稼働しているので身分上では公爵令嬢のはずなのにわかります。

 何かしら必要性があったから、私のことも必死で探していたみたいだもんね……ん?

 床の上にポツンと佇む、可愛い銀色の子竜が居る。

 姿を隠すわけでもなく私のことをじっと見つめて、何か伝えたいようだ。

「……どうしたの? 無事にジェイドさんの元へ帰れて、良かったね。ゲイボルグ……ジェイドさんは貴方のことずっと、待って居たんだよ」

「キュっ……キュウ……」

 私が話し掛けると急に床にぽたぽたと大粒の涙を落としたので、慌てて近寄り子竜を抱きしめた。

 ……そうだよね。これまでに、辛かったもんね。

 私がここで喚びかけて見えたこの子は、捕らえられて利用されるだけのあの姿を、ジェイドさんに知られることを拒んでいた。

 もしかしたら、帰って来てからもジェイドさんの前では、泣くことも我慢していたのかもしれない。だって、彼を長い間悲しませていたのは、ゲイボルグは自分のせいだって知っているから。