そんな私の秘密基地とも言える部屋に入ったギュスターヴは、興味深そうにして棚に置かれた無数の薬草を見ていた。

「君……名前は?」

「ギュスターヴ」

 間髪入れず偽名も使わずに名前を答えた未来の魔王に、私は心の中で頭を抱えた。本来ならば覚醒できていない魔族は、誰にも本当の名前は教えてはいけない。

 力なき魔族は、本当の名前を使うことで簡単に縛れてしまうからだ。

 純粋で無垢なギュスターヴに強い魔族の血が入っていることを知った悪い奴隷商は、名前で縛り、口に出すのもはばかられるような酷いことを沢山させた。

 ……そうだった。ギュスターヴは、本当に無垢で純粋なのよね。

 だからこそ、邪悪な部分を持つ人は滅ぼしてしまうべきだと、決意する。

 彼にとっての、純粋過ぎる無垢な感情でもった正義でもって。

 純粋だからこそ、ギュスターヴは魔王として厄介なのだ。彼は世界を滅ぼすことを、悪事だとは思っていなかった。

 むしろ、人間界に住む生き物たちへ魂の救済だと考えていたようだ。

「ギュスターヴ。私は、デルフィーヌよ。あの……貴方、魔族の血が入っているわね?」

「えっ」