だとすると、このギュスターブが魔王になる世界に居る私って、一回死ぬことになる……わよね。

 タイムリープな法則が、何がどう作用するのか、まったくわからないけど、ここに居る私が死ぬことを阻止される私なのか、一回死ぬ私なのか、いまいちはっきりとしない。

 そして、この世界で健気でいじらしいデルフィーヌとして、幸せになりたいという明確な目的があり……まだ、死にたくはなかった。

 ……だから、私は今にも泣きそうな目をした未来の魔王に近づいて、無言で手を伸ばしたのだった。


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 自分が異世界転生したと自覚したのは、まだ幼い六歳程度のこと。

 私の幼馴染レックスが私を庇って怪我をしてしまった時に、やけに綺麗に見えた血の赤に魅せられて、鮮やかに小説の世界観だけが記憶に降りてきた。

 ううん……その時の現象を例えるならば、幼い女の子の頭の中に何十万字にも及ぶ情報の波が、いきなり押し寄せて来たのだ。

 すぐになんてそんな情報量を処理出来る訳もなく、私は呆気なく倒れ、知恵熱で何日か寝込み、周囲は「怪我をしたのはレックスなのに」と不思議そうにしていたらしい。