「成長してるんだから、ならないと、おかしいでしょ? 手を離して良いの?!」

 揶揄うように笑って彼が怒った私の顔を見た瞬間、レックスの顔色が変わった。

「まずい……デルフィーヌ。急いで上がるから、絶対に俺を離すなよ」

 私はそれが不思議に思って、彼と同じように振り返れば、そこには空飛ぶ鳥の魔物。しかも、高レベルで有名で……この森では、一番に強いとされるガルーダだったのだ。

 レックスは慌てて速度を上げたけど、向こうは私たちを完全に狙っている様子だったし……攻撃されるなら、私の背中だった。

 何かパーンと弾けるような大きな音がしたと思えば、ガルーダは別方向へと逃げ去っていた。

「え? 良かった。レックス、助かったわ!」

 その間に崖を登り切ったレックスは、肩で息をしながら、怒りの表情で呟いた。

「あいつ……」

 ……あいつ? 何のことかしら。ガルーダ?

「どうしたの?」

 不思議に思って聞くと、レックスは慌てて首を横に振った。

「……いや、なんでもない。それより、俺が街まで背負って帰るよ。それだと歩けないだろ?」