私はその他大勢として勇者レックスが大好きな女の子たちの中に、加わるつもりなんて絶対ない。

「なんだよ。その言い方……俺はデルフィーヌを、誰とも比べたりなんてしないよ」

「そんな事言ってないってば。レックスは、私じゃなくても……たくさん居るでしょう」

 ほら……そろそろ知り合う予定の本命の聖女様とか、ツンデレ魔法使いとか、スタイル抜群のエルフ族とか。

「居ないよ。何の話? 俺のこと、そんなに嫌なの?」

「良いのっ……もう、帰りましょう」

 私は小説の内容を知っているけど、レックスは知らない。

 知らない人に説明する訳にもいかないし、何を言っても一緒だ。レックスはいなすように話を終わらされてムッとした様子だったけど、私の前に跪き、くじいた足首の治療をしてくれた。

「……はい。背負うから、俺の首に手を回せる? 絶対に離すなよ」

「離さないわよ。私が死んじゃうもの」

 心配性のレックスに、私は揶揄うように言った。彼は小さな突起を器用に足場として使って、いとも簡単にするすると崖を登っていく。

「あ。胸当たってる。大きくなった?」