ひょいっと上から覗いた顔が見えて、私は驚いた。

 ここに迎えに来てくれるとしたら、きっとグスタフだろうと思っていたからだ。彼はこの先の薬草が採れる高原も教えているし、私が薬草採りに行った事だって知っている。

「お前がなかなか帰って来ないから、皆探してる。俺は手分けして……この森に来た」

 レックスはなんでもないことのように、私の居る崖の下までタンっと音をさせて降り立った。

「そうなんだ……ありがとう。レックス」

 もごもごしてお礼を言うしか出来ないけど……レックスとは、二人きりであまり会いたくなかった私は、喜び満載という笑顔にはなれなかった。

「いや……助けに来たのが、俺じゃない方が良かった?」

 予想外のことを聞かれ、私は驚いた。そんなこと、レックスに言われるなんて、思ってもみなかったから。

「え? ……何言ってんの。そんな訳ないでしょう。レックスに来て貰えて、嬉しいよ。怪我して上がれなくて」

「ふーん……まあ、別に良いけどさ。最近俺と話してくれないから。デルフィーヌ」

「……レックスは私以外にも、仲良しな子、いっぱい居るでしょう」