けど、私はそこまでお金持ちにはなれないから、冒険者が売り払った魔核を買ってグスタフにあげるしかない。

「……僕、魔族としてなんて、覚醒したくないよ。デルフィーヌ」

 私の勉強部屋にある書物を早々に読み終えてしまったグスタフは、うちの薬屋を手伝ったり、家事を手伝ったりしたお駄賃で購入した高度な学問の書かれた書物にまで手を出している。

 私も今、彼が読んでいる書物をちらっと見たけど、複雑な数式が書かれていてパッと見でなんて全然理解出来そうもない。

「また、そんなこと言って! 私は貴方が立派な魔族として独り立ちが出来るまで、ずっと養ってあげるから……魔力が限定されて使えないままなんて、不便でしょう?」

「けど、デルフィーヌと居られなくなる……嫌だよ」

 グスタフはうるうると保護欲をそそる目になったので、私は安心するように髪を撫でてあげた。

 彼はまだまだ、何も知らない幼い子どもと同じ。早くに人の母を亡くして、魔族の父にも役立たずだと見捨てられていた。

 そんなギュスターヴの手を、無責任に離したくない。