私はようやく隣に居たレックスを真っ直ぐに見たので、やっとこっちを向いたと思ったのか、彼は嬉しそうににかっと笑った。

 ……心臓に悪い。

 だって、前世の記憶を取り戻すまでレックスのことを本当に好きだった訳だし、私には好きだという記憶が残っている。

 けど、冷静に考えて、どんなに大好きな人でも、絶対に叶わない恋ならば、未練なく身を引きたかった。

 レックスは金髪碧眼で凜々しく精悍な顔で、逞しく鍛えられた冒険者らしい身体を持ち、誰もが勇者と聞いて想像するようなTHEヒーローと言える外見を持っている。

 まあ……控えめに言っても格好良いし性格良いし、世界救っちゃうくらい意志だって強いし、女の子にモテない訳がないよね。

 レックスのことは嫌いでないから、厄介なのだ。彼の傍から離れないと、すぐにより好きになってしまいそうで。

「いや、それなら良いけど。最近、俺らの狩り場で魔物がよく倒されててさ……なんか、変なんだよなー」

 レックスは頭をかきながら、話題を変えた。

「え。それって、良い事じゃない。魔物が減った方が旅に出る人だって襲われる心配はないし」