嘘もついたことがないから、自分で決めることだって、わからないのね。この子は私が拾ったことで魔王にはならないはずだし……勇者レックスたちが倒すのは、彼の父親になるはず。

 私はこの純粋な子を、出来るだけ守ってあげたい。

 彼が魔族の王族として覚醒するのは、まだまだ先のはずだし……実は人に友好的な良い魔族は魔王軍の幹部にも居たりして、後々仲間になったりもする。

 寝返った魔族はサブキャラの一人と恋仲になり、仲良く暮らすようになって、ほのぼの後日談にも登場していたはずだ。

 ……うーん。ギュスターヴには、グスタフとも読める場合もあるって、小説にも書いていたわよね……。

「これからは、グスタフと名乗りなさい。今のところ、ギュスターヴという名前は、私しか知らないから。良いわね。グスタフ……」

「はい!」

「良い子にしてたら、私が養ってあげる。ちゃんと、言う事聞ける?」

「もちろんです!」

 ふさふさのしっぽがぶんぶんと振れているような幻影が見えた。

 そんな訳で可愛い子犬のような目をした成人男性を、私はこの日から面倒を見ることになった。


◇◆◇


「デルフィーヌ!」