Excalibur



 プシュゥゥ――……。ガタンガタン――……。
『――列車ガマイリマス』
 相変わらず一本調子なマイクアナウンスが構内に展開されている。
「色々とどうもな、ミシェット」
「えぇ。戦線復帰を願ってるわ」
 プッーー。浮かんでいた立体ホログラムが、虚空へと掻き消える。
「……」
 腹は決まった。依頼事とあらば無碍に断るのも男が廃るという物。
 自分の力量がどれだけ及ぶか不明だが、退屈凌ぎにはなるだろう。
「さぁ~て、じゃあ……」
 眼が覚めた時点から続いてきた監禁生活。地上の現状が気になる。
 大気圏外からのバンカーバスター掃討作戦は中止になったハズだ。
 レディ、ジャッカル、アリエス、シェイン、ロック、そしてレム。
 仮想空間の中でしか出会えていなかった面々とも早く再会したい。



「……そろそろ行くか!」
「地上に出るの?」
「あぁ、いいねェ」
 コズエと意見が合致するのも久しぶりだ。意気揚々と注文を出す。
「おいビークル。俺たちをそろそろ地上へ出してくれ」
『マスターノ許可、ガ、ヒツヨウデス』
 メタリックな音声が応ずる。背に担いだカミュを一瞥するジュン。
「……ぐぅ~……」
「……まだ寝てるけど。許可要るか?」
『マスターノ許可、ハ、ヒツヨウデス』
「融通利かないのね。私が出すのは?」
『……』
 沈黙するAIビークル。プログラム内部で沈思黙考している様だ。
『――レンタイホショウニン、二、ナレマスカ?』
「……んだよそれ」
「えぇ。いいけど」
 首を捻るジュンの傍で、あっさりとAIの要請に承諾するコズエ。
『――アクセプト。デハ、シュッパツシマス』
 ウィィ……シャキィッ。
 四人乗り電動ビークルの両側面が展開、メタリックな翼が生える。
「……おぉ」
 ゴゥン、ゴゥン。……ガゴォン。
 地響きの様な重低音を伴いコンコースを構成する隔壁が展開する。
 広い空間はこの時の為とばかり誘導路に滑走路、エプロンが出現。
 ゴゥン、ゴゥン、ゴゥン……。
 天蓋を構成していたドーム状屋根が左右に開かれ、夜空が見えた。
「……星だ……」
「えぇ。綺麗ね」
 動揺を隠せないジュン。久々に垣間見たリアルな星空に感動する。
 宇宙の歪から今に至る悠久の流れは確かに一方通行の様にみえる。
 だが、それすら逆再生なのかもしれない。何れは本来の無へ……。
「どうしたの?」
「……いや……」
 言葉では言い表せない感情の奔流を、そっと胸中に仕舞い込んだ。
 時は過ぎる。形を変えて朽ちてゆく。だが思い出は残る。永遠に。