ザザァ――……。
硝煙が立ち込めた乱雑な空間から、追跡者の暴れっぷりが窺えた。
AIロボ相手とはいえ、情け容赦のなさはジュンを凌駕している。
「ぜェ、ぜェ……ッ」
コズエの力量は良く心得ている。リミッターの外れた火力お化け。
神霊力で霊剣を顕現できる点は、カミュの神霊槍を彷彿とさせる。
「待って」
「……ッ?」
キィィイイ――。ジュンの直ぐ背後から飛来音が急接近してくる。
「待ってってば」
「……ッ!」
ザシャーーッ。逃げきれない……足を止め相手に向き直るジュン。
「……くッ」
彼女相手に、似た様な場面を過去に天界でも何度も味わってきた。
大抵は戦闘――。霊剣を手にコズエが全力で突撃してくる光景だ。
「もぅ。逃げても無駄って解るよね?」
「……あぁ……確かに」
過去、何度もコズエから逃げ様としたが無駄だった。結果は全敗。
戦闘モードに変じ、鬼神と化した彼女には一度も勝てた事がない。
「あんまり手を焼かせないで欲しいわ」
「……ッ」
フィィィィ――……ザ――ッ。
足底のスラスター噴射を止めたコズエが、嫋やかに眼前に降りる。
「ミシェットから要件を頼まれてるの」
「……へ? ……俺に要件って……?」
眼が点に変わる。この期に及んで、ミシェットが自分に一体何を?
謎のインパクトにより地表を塵にしようと企んだ恐らく張本人だ。
そんな極悪人を相手に、悠長に交渉のテーブルへつけるだろうか。


