Excalibur

 

 ドガァ――ッ! 出入口の直ぐ外部の方で爆発音が湧き起こった。
「……ッ?」
 ギャギャギャ……。金属のひしゃげる、鈍い音が店内に反響する。
 身じろぎするジュンの眼前で、防弾シャッターがひしゃげてゆく。
「――ッ!」
 プシュゥゥ――……。店外は既に濛々たる硝煙が立ち昇っていた。
 砕けたシャッターの外から猫眼の美少女が店内を覗き込んでいる。
「見ぃつけたっ」
「……しまった」
 安堵も束の間、憔悴するジュン。騒動の主因はコズエだった様だ。
「一分経過したから。時間のハズよ」
 抑揚を抑えた感情の籠らない低い声音からは本音が読みとれない。
「いや、……どうかな? 確か……」
 背に担いだカミュの身体を背負い直すと、意を決して脱出を狙う。
「まだロスタイムが残っているハズだぞ」
「……ロスタイム?」
 ギィィ――。シャッターを抉じ開けながらコズエが小首を傾げる。
「言ってなかったっけな。ロスタイムの事。ほら、サッカーのアレ」
「サッカーは知っているけど。ロスタイムなんて言ってたかしら?」
 キュィ。小さな電子音をたて、赤い短髪の美少女がジュンを視る。
「あぁ、忘れたンじゃないか? 俺はちゃんと言ったつもりだけど」
「そうだっけ? で、どうすればいいの?」
「だから、ロスタイムあと一分だけ待って」
 ジュンの必死の説得も空しく、コズエは紅い猫目を鋭く光らせる。
「……いや、もう待たないわ。どうせ嘘だもの」
「――ッ!」
「あっ!?」
 ダッ――。
 小脇をすり抜けると、カミュを背負ったままジュンは全力で疾る。
「待って。大事な話があるからっ」
 ダダダーーッ。
 捕まっては適わない。散らかったコンコースを夢中で奔るジュン。