Excalibur

 ぷはーっ。ドンっ!
 揺れる木製のカウンター。ビールジョッキが豪快に叩き置かれた。
「マスター、も一杯っ!」
『――カシコマリマシタ』
 コポコポコポ――……。
 人型ロボが酒を注ぐ。横に座ったジュンが怪訝そうに眉を顰める。
「……おい、よせよ……」
「だぁーってさあ。未来書き換わっちゃったっぽいしぃー」
「……お前が書き換えたんだろーが」
「あーん? 今、なんか言ったー?」
「……いや、何にも……」
 下手に酔っ払いにからまれちゃ適わない――。口を閉ざすジュン。
 
 数分後――。隣が酒臭い。カミュの酔いはかなり回っている様だ。
「……ぉしゃけくらひゃぁぃぃ……」
『――カシコマリマシタ』
 コポコポコポ――……。
 人型ロボが波々と酒を注ぐ。満杯のジョッキが一気に空になった。
「ぅ~……ぁらまいらいぃ~……」
 多量の酒が入ったとみえ、カミュの下腹はぽっこり膨らんでいる。
 マイクロミニのフロントホックが外れピンク色の下着が露出した。
「どー見たって飲み過ぎだろ……」
 酔っ払いを介抱している場合ではないが――。自由には動けない。
「……ねむぅくらってひらぁ~~……」
「何を言ってるのかまるで解らん……」
「っ! ――ぅぇえっ。ぼげぇえっ!」
 バシャッ。真っ赤な顔を向けたカミュが、盛大に吐瀉物を吐いた。
 大きな音を立ててホックが外れ、マイクロミニが床下へと落ちる。
「……ぉぇぇええぇ~~……」
「……くッ……なんだよ!?」
 至近距離から黄色の液体を吐きかけられ、思わず面食らうジュン。
 ぽっこりと膨らんでいた下腹が、すっかり元の原形に戻っている。
 今まで散々呑み干してきたビールを、丸々ぜんぶ吐き出した様だ。
「……ぅ~~……おぃしゅぎらぁ~~……」
「なぜ、……わざわざ俺の方目掛けて……」
 カウンターに突っ伏す酔っ払いの呻吟を聞き流し黙々と服を拭く。
 酒臭さの余り顔を顰めるジュン。文句を言うべき相手は寝ている。
「……」
『ナヤミゴトナラ、オキキシマショウカ』
 途方に暮れるジュンの胸中を察したロボバーテンが同情を示した。