Excalibur

 フィィィ――……。(ビークルの駆動音)。
 真横では、運転席で腕組みをしたカミュが小難しい顔をしている。
「……?」
 考え事だろうか。見慣れない珍しいカミュの一面に興味を抱いた。
「何だよ。……ボーっとしてさ」
「んー? 何かおっかしーなーって思って」
「おかしい? 何が?」
 それとなく促すジュン。カミュが不思議そうに小首を斜に傾げる。
「揺れがさぁー……」
「……」
 予期されていた大揺れが来ない。密かにだが、気にはなっていた。
「ディープインパクトが……来ないな」
「連中、攻撃取りやめたって事かあ?」
「……え? なら、俺たちはもう……」
 自由の身――? その言葉を呑み込んだ。まだ時期尚早ではある。
 いずれにせよ、地球上に降りかかる脅威は回避出来たという事か?
 いや、あり得ない。相手は熾天使だ。そんなに甘い連中ではない。
「ぁたしらが運命書き変えちゃったから、未来が変化した?」
 運命を書き替える? 本来、神の鉄槌で地表は粉微塵になるハズ。
 それをカミュが筋書きを変えた事で、未来軸も変わってしまった?
 しかし――。そうすんなり事が良い方向に進むとも思えなかった。
「待てよ。……未来改変なんて、……そもそも可能なのか?」
「ぅー……ん……」
 唇に手を当て何事か黙考するカミュ。青い眼がキョロっと動いた。
「まだ何とも言えないけど。……まーちょっと様子見てみよっか」
「……?」
 横目で窺うカミュの端正な美貌が、厳めしい顰めっ面に変わった。
「まだ猶予あるみたいだしさ、息抜きに酒場でも行ってみよっか」
「……へ? 酒場? なんで?」
 突拍子もないカミュの言葉に、ジュンはキョトンと眼を丸くする。