ザッ――。接近してきた紅い眼の少女が、悠然と語り掛けてくる。
「ご無事でしたか。ジャスティン王子」
「……ッ」
レムの容姿をしてはいるが、雰囲気が何時もの彼女とまるで違う。
紅い眼光といい、威圧感といい、まるで有無を言わさぬ執行人だ。
「今の男ってジャッカルですよね? 実は仲良しだったのですか?」
「……だったら何だよ」
「いや別に。王国を救ってくれて頂いた事を、感謝してるだけです」
さも怒る様子もなく、レムは紅い双眸を楽しそうに光らせている。
「ふーん。感謝してる様にゃ見えねーが。奴とは敵同士だっけな?」
「今は別です。非常事態ですからね。同郷同士、協力し合わないと」
「……同郷……グランドラ王国民同士、……って事か」
一見、淡々とした会話の中にも、ジュンは探りを入れ続けていた。
ふとした会話に、攻略の糸口が意外と隠れている事を学んでいた。
「随分と都合いーんだな。敵対してたのが簡単に協力するなンてよ」
「ジャスティン王子の戦い、見てましたよ。銃がないと大変ですね」
ジュンの質問にはまともに応えず、レムがさらりと話題を変える。
「生憎、銃は今は持ってねンだよ。でも、十分戦えちゃいただろ?」
皮肉めいたレムの声に、ジュンは努めて平静を装いながら応ずる。
「それにそっちこそ、巨大サソリに随分と苦戦していた様だよな?」
「あぁ。……アレですか?」
半裸で佇立したまま、レムが頬を染めてはにかむ素振りをみせた。
「アレが予想以上に硬くて。ついシンクロ率を上げちゃいました♪」
「……シンクロ率?」
同期させるという事か。しかし何に? 頭上に?を載せるジュン。
「――はっ?」
何事かを察知したかピクリと眉をひそめると、レムが口早に囁く。
「……余り時間がないみたいです。王子、急がないといけませんよ」
「ジェラルド……だよな?」
大陸の乗っ取りを企む暗黒皇帝とやらの到着が近い、との事だが。
「あぁ。……そうですね」
半ば上の空といったレムの様子に、ジュンは妙な違和感を覚える。
「そうですね、……って。なーんか何か他人事みたいな言い方だな」
「そうですか? 別に普通ですけど。ボクは至って真剣ですけど?」
「……うーん……」
悩まし気に眉根を寄せるジュン。いまいちレムの感情が掴めない。
慇懃なその口調からは何時もの親密さは感じない。むしろ逆――。
「ジェラルド本人の戦闘力は、……ぶっちゃけ低いようですが――」
「……あ、そうなんだ? つかその方が個人的には助かるけどな?」
「ですが、その後に手強い連中が控えている様です。要用心ですね」
拍子抜けするも束の間――、レムの断定口調に、違和感を感じた。
「手強い連中? つっても、なんでそんな事がお前に解るんだよ?」
意を得たとばかり、無表情だったレムの満面に笑みがひろがった。
「ぅん。ボクにはね、少し先を見通せる力、千里眼があるからです」
「……へぇ。千里眼、ねぇ……」
ぶっちゃけ、釈然としない。ただ、レムは確信を持って言いきる。
「例えばボクが少し先の未来から来た……と言えば信用しますか?」
「……へ? 未来から……お前が?」
素っ頓狂な声を出すジュン。その驚き様にレムの態度が硬くなる。
「ボクの言葉が信用できないのも尤もです。気持ちは解りますけど」
一呼吸置くと、レムが口角をあげた。紅い眼がにんまりと微笑う。
「大丈夫っ。王子にも、直ぐにきっと理解るようになりますよっ♪」
「……」
やはり釈然としない。というより、何もかも曖昧。意味不明――。
ジェラルドの背後の黒幕連中?に関しても何処までが本当なのか。
今のレムからは、真意の読めない得体の知れぬ不気味さがあった。
「ご無事でしたか。ジャスティン王子」
「……ッ」
レムの容姿をしてはいるが、雰囲気が何時もの彼女とまるで違う。
紅い眼光といい、威圧感といい、まるで有無を言わさぬ執行人だ。
「今の男ってジャッカルですよね? 実は仲良しだったのですか?」
「……だったら何だよ」
「いや別に。王国を救ってくれて頂いた事を、感謝してるだけです」
さも怒る様子もなく、レムは紅い双眸を楽しそうに光らせている。
「ふーん。感謝してる様にゃ見えねーが。奴とは敵同士だっけな?」
「今は別です。非常事態ですからね。同郷同士、協力し合わないと」
「……同郷……グランドラ王国民同士、……って事か」
一見、淡々とした会話の中にも、ジュンは探りを入れ続けていた。
ふとした会話に、攻略の糸口が意外と隠れている事を学んでいた。
「随分と都合いーんだな。敵対してたのが簡単に協力するなンてよ」
「ジャスティン王子の戦い、見てましたよ。銃がないと大変ですね」
ジュンの質問にはまともに応えず、レムがさらりと話題を変える。
「生憎、銃は今は持ってねンだよ。でも、十分戦えちゃいただろ?」
皮肉めいたレムの声に、ジュンは努めて平静を装いながら応ずる。
「それにそっちこそ、巨大サソリに随分と苦戦していた様だよな?」
「あぁ。……アレですか?」
半裸で佇立したまま、レムが頬を染めてはにかむ素振りをみせた。
「アレが予想以上に硬くて。ついシンクロ率を上げちゃいました♪」
「……シンクロ率?」
同期させるという事か。しかし何に? 頭上に?を載せるジュン。
「――はっ?」
何事かを察知したかピクリと眉をひそめると、レムが口早に囁く。
「……余り時間がないみたいです。王子、急がないといけませんよ」
「ジェラルド……だよな?」
大陸の乗っ取りを企む暗黒皇帝とやらの到着が近い、との事だが。
「あぁ。……そうですね」
半ば上の空といったレムの様子に、ジュンは妙な違和感を覚える。
「そうですね、……って。なーんか何か他人事みたいな言い方だな」
「そうですか? 別に普通ですけど。ボクは至って真剣ですけど?」
「……うーん……」
悩まし気に眉根を寄せるジュン。いまいちレムの感情が掴めない。
慇懃なその口調からは何時もの親密さは感じない。むしろ逆――。
「ジェラルド本人の戦闘力は、……ぶっちゃけ低いようですが――」
「……あ、そうなんだ? つかその方が個人的には助かるけどな?」
「ですが、その後に手強い連中が控えている様です。要用心ですね」
拍子抜けするも束の間――、レムの断定口調に、違和感を感じた。
「手強い連中? つっても、なんでそんな事がお前に解るんだよ?」
意を得たとばかり、無表情だったレムの満面に笑みがひろがった。
「ぅん。ボクにはね、少し先を見通せる力、千里眼があるからです」
「……へぇ。千里眼、ねぇ……」
ぶっちゃけ、釈然としない。ただ、レムは確信を持って言いきる。
「例えばボクが少し先の未来から来た……と言えば信用しますか?」
「……へ? 未来から……お前が?」
素っ頓狂な声を出すジュン。その驚き様にレムの態度が硬くなる。
「ボクの言葉が信用できないのも尤もです。気持ちは解りますけど」
一呼吸置くと、レムが口角をあげた。紅い眼がにんまりと微笑う。
「大丈夫っ。王子にも、直ぐにきっと理解るようになりますよっ♪」
「……」
やはり釈然としない。というより、何もかも曖昧。意味不明――。
ジェラルドの背後の黒幕連中?に関しても何処までが本当なのか。
今のレムからは、真意の読めない得体の知れぬ不気味さがあった。

