ダダダ――。砂塵を巻き上げ脱兎の如く城門に進軍する靴音一つ。
 立ち塞がる魔物を薙ぎ倒し、ジュンは城門からの単騎突撃を敢行。
『ギギィッ』
『ケキョォ』
「――はッ」
 ヒュォ、――パァンッ! 殴打音と共に弾かれて吹き飛ぶ魔物群。
 小柄かつ俊敏な魔物は、振り回した長物の穂先で薙ぎ倒してゆく。
『一瞬で我を理解するとは。小僧、貴様の潜在能力は驚異的だな』
「へッ、……どうだか。とにかく助かったぜ相棒。ありがとよ」
 ――タタッ。
 手中の神槍に感謝しながら、半瓦解した王城の門下を駆け抜ける。
『キュルァアッ』
 不意に、奇声が上がった。
 ゴパァッ! 破砕音。直ぐ背後で、城門石壁が微塵に粉砕される。
「……チィッ」
 飛んでくる石飛礫や瓦礫を巧みに避けながら奇声の方向を見やる。
『グゲァアッ!』
 ドォン――ッ。後方から追い縋る巨大サソリには見覚えがあった。
「……ッ?」
 見開かれたジュンの眼が、巨蟲の両鋏のある一角に釘付けになる。
 その先端に引っ掛かっていたのは、見覚えあるレムの着衣だった。
「お……おぉ――……ッ」
 湧き上がってくる怒りに我を忘れ、喉奥から咆哮を発するジュン。
『グゲゴアッ!!』
 ヒュ――ドゴォッ!!
 高度からの打ち下ろしの鋏槌を、ジュンは間一髪横っ飛びで躱す。
 ブシュゥッ。瀟洒な装束の破れ目から一筋の鮮血が噴き飛沫いた。
「……――おぉおッ!」
 ガバァア――……。
 喉奥から怒りの雄叫びを発しながらジュンは大身槍を振りかざす。
「……――おぉおおおッ!!」
 ズシャァァァア――…………ヴォンッ!
 砂塵を上げながら片膝立ちで体制を整えると、長槍を一閃させた。
「……――爆ぜろォおッ!!」 
 ヒュッ、――ズドォオッ!! 炸裂音と共に巨蟲が衝撃に揺らぐ。
『……ゴァッ?』
 カァァァア……――ッ。
 外骨格に深々と突き立った神槍の柄が、燦爛たる眩い光を発する。
『グゲァアア……ッ?』
 ボンッ、ボン――。ボンボンッ!! 断続的に跳ね上がる破裂音。
 身悶える巨蟲の鋏角・胴体・節足。……各部が膨れあがってゆく。
「――――焦熱魔煌・烈破弾(グローリー・バースト)ッ!!」
『――ゲァアアッ!!?』
 ――ドォンッ! 爆発。咆哮をあげる巨蟲が血潮を噴き爆散した。