タタタ――……。
 動乱の最中、居館(パラス)の上階目掛け階段を駆け上がる二人。
「ケケッ……もっと早く走れねェのかよ鈍足」
「ぜぇ……お前と一緒にすんなってバカ……」
 静まった無人の回廊内を並走しながら、神経を逆撫でし合う二人。
 ジャッカルは息一つ乱れてない。俊敏極まる動きはまるで忍者だ。
「……聞いたぜ。礼拝堂で惚けてたンだってな?」
「俺は覚えてねーけどな。そうだったらしいけどよ」
「あのじゃじゃ馬が行方知れずだってよ。痴話喧嘩でもしたのか?」
「してねーよ。つか、礼拝堂の地下に居るつったら、信じンのか?」
「……あん? この王城の礼拝堂だろ? 地下なんかあったかァ?」
 怪訝そうな眼を向けるジャッカル。その脚が、ピタリと止まった。
「――待て、ジャスティン」
「……あ?」
 シィーン……。
 先まで湧き立っていた城外での喧噪が、やけに静まり返っている。
「なんだ? やけに静かな――……ッ」
「伏せろッ」
 ――ドゴォ……ンッ!
 高域の飛翔音に続き湧き起こった衝撃が、城館全域を揺るがした。
「チィッ。来やがった。この感じ……旦那の親衛隊か?」
「ジェラルドの……親衛隊?」
「あぁ。旦那直属の親衛隊、――『七魔神』だ」
「あーッ。七福神じゃねーのかよッ!」
「バカが、ボケるタイミングじゃねーだろ……」
 黒ジャケットの袖口を検めながらジャッカルが口元を引き締める。