異世界に来たばかりで、ジュンには何の能力も記憶も経験も無い。
「お前は、……まだ俺を慕ってるのか?」
この男が何故自分を守ったのか、その明確な理由が知りたかった。
「……さぁてね」
不明瞭な返事も、ジュンには想定内だった。切り口を変えてみる。
「王女に溺れ、魔王の威厳も失った今の俺に、魅力なんてないよな?」
「チッ。バカが開き直りやがって。だとしても、過去は変わらねェさ」
ジャリ――。
一歩詰め寄り、男が両手をポケットに入れたまま不愛想に応える。
「嘗て俺たち四神魔と共に世界を統べた偉大な魔王、それがアンタだ」
「……俺が……」
正確にいえば『ジャスティンが』という事だが。実感が湧かない。
「アンタに復活して貰わねェと、世界は混沌と戦乱に呑まれちまうぜ」
「……ッ!」
「俺らはアンタを陰から護ってたンだ。王女に現を抜かすアンタをな」
「うつつも何も……俺は――ッ!」
言葉を閉ざすジュン。自分はジャスティンの事をまるで知らない。
異世界で大陸を共に統べ、隠遁後も見守ってきた彼の方が詳しい。
「暗黒卿――ジェラルドの旦那が世界を獲っちまったら終わりだぜ?」
「その……ジェラルドって奴は……?」
「覚えてねェのか。暗黒皇帝ジェラルドだ。嘗てのアンタの同胞だよ」
「……んな事言ったってなぁ……」
異世界に来たばかりで解る訳もなく、ジュンは頭を左右に振った。
「……知らねぇよ、そんな奴……」
「チッ。手間のかかる魔王様だぜ、……ったくよ」
愚痴りながらも、ジャッカルは根気よくジュンの相手をしている。
無粋な格好に似合わず、意外に性根は優しい男なのかもしれない。
「……今の俺に、何をさせてーんだよ……?」
「先ず、アンタに以前の力を取り戻して貰いてェ。で、どうすンだ?」
「……こっちが聞きたいくらい――ッ!」
言いかけて、はっと目を瞠った。クローゼットに秘密がある筈だ。
「ふふ。そこまで言うならジャッカル……」
「ぁん?」
眼前に立つ男を睨み据えるジュンの眼が――キラリと邪に光った。
「――俺をまもれ。ジャスティンの居た王子室まで俺を案内するんだ」
「チッ、大きく出ちまったよ。このお調子者のバカどーするかねェ?」
「お……おいッ! お前な、バカってゆーなよッ!」
「アンタは昔っからお人好しの大バカだってのッ!」
ギャーギャーッ!
翼竜の屍と血の臭い漂う薄暗い礼拝堂の一角が、どっと賑わった。
「お前は、……まだ俺を慕ってるのか?」
この男が何故自分を守ったのか、その明確な理由が知りたかった。
「……さぁてね」
不明瞭な返事も、ジュンには想定内だった。切り口を変えてみる。
「王女に溺れ、魔王の威厳も失った今の俺に、魅力なんてないよな?」
「チッ。バカが開き直りやがって。だとしても、過去は変わらねェさ」
ジャリ――。
一歩詰め寄り、男が両手をポケットに入れたまま不愛想に応える。
「嘗て俺たち四神魔と共に世界を統べた偉大な魔王、それがアンタだ」
「……俺が……」
正確にいえば『ジャスティンが』という事だが。実感が湧かない。
「アンタに復活して貰わねェと、世界は混沌と戦乱に呑まれちまうぜ」
「……ッ!」
「俺らはアンタを陰から護ってたンだ。王女に現を抜かすアンタをな」
「うつつも何も……俺は――ッ!」
言葉を閉ざすジュン。自分はジャスティンの事をまるで知らない。
異世界で大陸を共に統べ、隠遁後も見守ってきた彼の方が詳しい。
「暗黒卿――ジェラルドの旦那が世界を獲っちまったら終わりだぜ?」
「その……ジェラルドって奴は……?」
「覚えてねェのか。暗黒皇帝ジェラルドだ。嘗てのアンタの同胞だよ」
「……んな事言ったってなぁ……」
異世界に来たばかりで解る訳もなく、ジュンは頭を左右に振った。
「……知らねぇよ、そんな奴……」
「チッ。手間のかかる魔王様だぜ、……ったくよ」
愚痴りながらも、ジャッカルは根気よくジュンの相手をしている。
無粋な格好に似合わず、意外に性根は優しい男なのかもしれない。
「……今の俺に、何をさせてーんだよ……?」
「先ず、アンタに以前の力を取り戻して貰いてェ。で、どうすンだ?」
「……こっちが聞きたいくらい――ッ!」
言いかけて、はっと目を瞠った。クローゼットに秘密がある筈だ。
「ふふ。そこまで言うならジャッカル……」
「ぁん?」
眼前に立つ男を睨み据えるジュンの眼が――キラリと邪に光った。
「――俺をまもれ。ジャスティンの居た王子室まで俺を案内するんだ」
「チッ、大きく出ちまったよ。このお調子者のバカどーするかねェ?」
「お……おいッ! お前な、バカってゆーなよッ!」
「アンタは昔っからお人好しの大バカだってのッ!」
ギャーギャーッ!
翼竜の屍と血の臭い漂う薄暗い礼拝堂の一角が、どっと賑わった。

