Excalibur

 ドドドドド――……。
 緊張感の漲る戦場。橋むかいに一際大きな地響きが急接近してくる。
「な、……なんだ?」
「新手だッ! モンスターの軍勢だあッ!」
「……お、恐れるなッ!」
「……くっ」
 襲来に慄き、ざわめく家臣。レムが口端を噛み、片手剣を握り直す。
「王子。一刻も早く王女の行方を追って下さい!」
「……いや、俺は……ッ」
「この場はボクが食い止めます。頼みますよっ!」
「……ッ」
 ギャァアアア――ッ。
 奇っ怪な咆哮を発しながら、遠景の視界に魔物が現れ突撃してくる。
「……くッ」
 確かに。丸腰では足手纏いにしかならない。渋々背を向けるジュン。
 タタタ――。
 ひしゃげた長方形の大扉を潜り、城内へ舞い戻ると、決意を固めた。
 『クローゼットだ……』
「……あぁ、解っている」
 ジャスティンの台詞が浮かぶ。ジュンは真っ先に最上階を目指した。
 ――バリィンッ!
 礼拝堂を横切ろうとした時、破砕音がして硝子の破片が降ってきた。
「――ッ?」
 ギャァアアア――ッ。
 割れた窓から、一体の翼竜が回廊を奔るジュン目掛け飛翔してくる。
「……ちぃッ」
 ――ドォンッ!
 横っ飛びで間一髪かわすジュンの装束が裂け、一筋の鮮血が迸った。
「……ぅ、ぐッ」
 立ち上がろうとして顔を顰めるジュン。着地時に足首を捻った様だ。
『ギャゥアウッ』
 もがく様にして手狭な回廊に巨躯をねじ込み、長い首を伸ばす魔物。
 先端の鋭利に尖った嘴は、軽くジュンを呑み込む程のスケール感だ。
「……くッ」
 低く身を屈め、ジュンは匍匐状態で魔物の攻撃を搔い潜ろうとする。
 改装中との事もあってか礼拝堂の近辺は全くの無人状態に近かった。
 ――救助を求めるのは無理そうだ。
『グゲァアアッ!』
「――ッ!」
 ヒュォッ!
 間伐入れず鉤手を伸ばす翼竜の鋭い一撃が、這い回るジュンを襲う。