Excalibur

 オォオオオ――……。
 一陣の突風が髪を靡かせる。硝煙の匂い。各所で火煙が上っていた。
「何処だよッ」
 手前に王城。奥行きある城砦口の左右・最上部に城塔が聳えている。 
 正面は跳ね橋、頭上にプレテーシュ、後方に中間庭園を設えた城門。
「……正門?」
「王子、お怪我は?」
「……え?」
 瞠目するジュン。直ぐ直下に、血塗れの大型翼竜が突っ伏している。
「……そっちへ行ったぞッ!」
「……こっち手伝ってくれ!」
 疎らに散会した勇猛な兵達が指揮している。統率は執れている様だ。
「お、おぉい……また来たぞぉぉおッ!」
「……撤収だ、撤収ゥゥゥゥーーーッ!」
 ワァァァアア――……。
 各所から喚声と地鳴りが勃発。王城での防衛戦は苛烈を極めていた。
「間一髪だったね。ボクはレム。当然覚えてますね?」
「……三銃士の、だったよな」
「有難う。朝礼での元気な姿を見てホッとしましたよ」
 身長は五.五フィート辺り。橙色の髪を肩付近で切り揃えた軽装だ。
 ハキハキした丁寧口調と持ち前の闊達さに、品の良さが窺い知れる。
「レム様ッ! ゴブリンの群れが向かってきますッ」
「モンスタークラブは当方で時間稼ぎを致します故」
 ギャギャギャッ!
 奇っ怪な姿形をした魔物の一軍が喚きながら猛然と突っ込んでくる。
「っと、王子、さがって!」
「……あ、あぁ」
 庇う様にジュンの手前に歩み出るや否や、レムは力強く地を蹴った。
「――はぁっ!」
 ズバンッ!
 俊敏な影が剣光を一閃させる。血飛沫が舞い、異形の軍団を穿った。
「おぉおっ!」
「……流石だ」
 どよ、どよ……。
 家臣達から称賛の声が上がる。兵団の士気が、ワァー―。向上した。
「……ッ!」
 ――ット。
 軽やかに着地すると、笑顔で向き直り、後方のジュンに呼び掛ける。
「おーいっ! 王子はボクの後方からアドバイスをっ!」
「……あぁ……」
 確かに強い。が、多勢に無勢か、戦況はじわりと悪化している様だ。