夕陽を浴びて煌めく湖面。孤島に聳える宮殿。旅行にでも来た様だ。
「まだかかりそうか?」
「まぁね。今回なんか違うっつか」
 眼鏡式ゴーグルを装着したカミュの表情には、何時もの余裕がない。
「モンスターがめちゃ強くてっ、あーっ?」
「……そっか」
 ザザァ――……。
 何気に湖面に視線を馳せる。一見長閑な光景だが、地上では今……。
「っと危な!」
「……?」
 オォオオオ――……。
 宙空照射された3Ⅾホログラムは、地上戦の模様を映し出している。
 今しがた、レムが飛翔型の大型竜の特攻を間一髪で避けたところだ。
「ジュン、ちょっとダイヴの感度上げていいっ?」
 直ぐ隣で特殊眼鏡(ゴーグル?)を装着した金髪少女が訴えてくる。
「ダイヴ?」
「”ダイバージェント”の感度だよっ!」
 恐らくはホログラム装置、或いはアプリの呼称を指してるのだろう。
「……あぁ、」
「よっし。さぁ反撃開始だっ!」
 カチカチ――ッ。
 明瞭な返事も待たずに勝手に意気込み、カミュが眼鏡の縁を弄った。
「……?」
 ヴン――……。
 少女の喝と同時に空中ディスプレイホログラムの出力がアップ――。
「ダイヴ完了。アーユーレディ?」
「……お?」
「一つ言っとくとね、リアルと繋がってるから。気をつけてね♪」
 カミュの発した謎めいた台詞は、ジュンの耳には届いていなかった。
「……え?」
 ヴァ――ァア――……。
 長閑だった周囲の景色が、映像内一面を満たす戦場と同化してゆく。
 立体音響、ホログラム等とまるで桁違いの臨場感は、まさにリアル。
「……ッ!」
「やぁ、ジャスティン王子」
「……お前は……ッ?」
 息を呑むジュンが視線を向けた先に、橙色の髪の少女が立っていた。