チュィン――ッ。
正門に差し掛かったジュンの足元を、一条のレーザー光が射抜いた。
「わッ!」
「危ないっていったよね?」
涼し気に揶揄するなりカミュは両手を大きく振りながら呼び掛ける。
「サミュエルぅ! ぁたしだってばっ。お客さん連れてきたのーっ」
「……旧約の預言者かよ……」
焦げて煤けた砂地から立ち昇る一条の硝煙を手で払いながらぼやく。
「――カシコマリマシタ」
ガゴン、ガゴン、……。
重々しい地響きを立てながら、古めかしい城門が左右へ開いてゆく。
「そこ、地雷原になってるから注意して」
「……は? 誰の為の地雷なんだよ」
ゴゴゴゴ……。
真っ赤な夕陽を背景に悠然と聳える巨石建造物。眼福とはこの事か?
「よっ……と」
「……は?」
驚愕するジュン。金髪少女が砂地に体操座りでしゃがみ込んでいる。
「サミュエルぅ、ヘッドセットと端末持ってきてー」
「――カシコマリマシタ」
ヒュゥゥ――…ン。
何処からともなくプロペラ音がしてヘリ型ドローンが飛翔してきた。
その頭上の窪みに、眼鏡の様な物体と一双の黒い手袋を載せている。
「建物の……中には入らないのか?」
「めんどいからここでいーのぉー!」
二人のやり取りを他所にドローンは金髪少女の面前で空中浮揚――。
「――ドウゾォゥ、オトリクダサァイン♪」
「ありがと、サミュエルっ♪」
グ――っ。
艶めかしい音声に促されるままカミュはゴーグルを頭上に装着する。
虹色の半透明眼鏡と薄手の手袋を填めた少女が、にんまりと嗤った。
「これで勝ちィ~♪」
「……何やってんだ」
「内部設定の調整ー」
クイッと眼鏡の縁を引き下げ、カミュが横目でジュンを睨みつける。
「あんたさ、ぁたしがただ逃げてるだけだと思ってた?」
「あぁ……でも、まさかこんな地下要塞にまでとは……」
ズゥゥ――……ン。
上層での地鳴りは未だに続いていた。未だに戦闘の真っ最中の様だ。
「まぁ、見てて」
「……?」
キュィィィ――……。
高域の電子音が鳴る。不意に立ち上がるなりカミュが両腕を揮った。
「――ばきゅんバキュンバキュンばきゅんっ!!」
およそ正気とは思えない金切り声を発し、金髪少女が髪を振り乱す。
「ダダァーンッ! どぱぱぱっ! オラオラオラオラっ!!」
「……」
駄目だこりゃ……絶望的な光景を前にジュンは消沈して肩を落とす。
得体の解らぬ太鼓ッ腹の召使いに、イカれた王女に、基地外三銃士。
―― 役満だ ――。

