ヒュゥゥ――……ン。
 手狭な街中を縫う様に疾駆するビークルが真っ赤な湖面に突っ込む。
「おいッ……沈むぞ!」
「だいじょーぶだって」
「ダイジョブデースゥ」
 取り乱すジュンを、ヴイチューバ―の音声とカミュが同時に諫める。
 ザぁぁあああ――……。
 微細な波飛沫を立てたと思いきや煌く湖上をぐんぐん推進してゆく。
「……ッ」
「ホバークラフトの改良版だよ♪」
「ドコダッテハシレマスゥゥーー」
「おい。拗ねた音声になってるぞ」
 ザぁぁぁああ――……。
 ドームを満たす夕空を浴び、煌く水面を切りながら走るAI自動車。
 遠方の孤島にポツンと聳えていた建造物がみるみると近接してきた。
 ゴシック調の厳めしい建築は、どうも王女の住まう地下城館との事。
「見えてきた。シートベルト外して」
「――アクセプト」
 フィィィ――……ガチャッ。
 オートロック式のベルトが外れ身軽になる二人。眼前の孤島に上陸。
「ありがとミッシェル。適当に待機してて」
「リョーカイ。ドウイタシマシター」
「……?」
 ザ――ッ。
 怪訝そうな顔のジュンを先置いて、颯爽と孤島に降り立つ金髪少女。
 直ぐ眼前には、黄昏時の様な真っ赤な空を背景に宮殿が聳えている。
「さ、着いてきて」
「……あぁ」
「勝手に動かないでね? 行くよっ」
「……?」
 トテテ――ッ。
 宮殿目掛け颯爽と駆けだすカミュ。ジュンは渋々その後に追従する。